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プロセス計装ラインのベスト・プラクティス

書類を確認する2人のエンジニア

プロセス測定 – 導圧管のベスト・プラクティス

プロセス内の圧力、流量、レベルを測定する際は、誰もが安全性と正確性を重視することでしょう。 取出し口から伝送器に至るまで、プロセス計装の測定ループを構成する各コンポーネントが正常に機能していなければ、プロセスの正確な測定を行うことはできません。 しかし、伝送器に気を取られるあまり、その精度が導圧管の影響を受けることを失念しているエンジニアや技術者は少なくないというのが現状です。

プロセス計装ラインの性能が低下していたとしても、なかなか気付きにくいものです。しかし、伝送器にばかり注目していても、性能低下の原因が導圧管にあれば、状況が好転することはありません。

最終的に正確な測定値を得るためには、プロセス導圧管に発生する可能性がある問題(全体の設計やレイアウトに起因するものも含む)を理解しておく必要があります。今回は、プロセス導圧管を適切に機能させるためのベスト・プラクティスを紹介します。エンジニアや技術者の方はぜひご一読ください。

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プロセス測定用の標準的な導圧管


材料の選定

プロセス計装ラインを構成する基本コンポーネント[プロセス・インターフェース・バルブ(PIV)、導圧管、マニホールドなど]の材料は、精度に影響することがあるため、慎重に選定してください。

大抵の場合、プロセス流体、環境条件、システムの圧力/温度に基づいて使用する合金を選定します。 耐食性の観点から、大半のアプリケーションにおいてはステンレス鋼かそれ以上の合金を選定することをお勧めします。 しかしながら、プロセス・インターフェース・バルブや配管はもちろん、一部のマニホールドにさえ炭素鋼を使用し続けている産業プラントは少なくありません。 低水分のアプリケーションであれば炭素鋼でも構いませんが、その他の場合はリスクが潜在しているおそれがあります。一般的に炭素鋼にはスケール(生成物)が付着します。 このスケールが剥がれて下流にあるバルブのシートに堆積すると確実に締め切ることができなくなり、結果的に伝送器による校正値や読み取り値の精度が下がることになります。 炭素鋼製のコンポーネントを計装ループに使用する場合、スケール(生成物)によってシステムのバルブのオペレーションに支障が出ていないか、注意深く監視する必要があります。 なお、スウェージロックが実施している 材質科学トレーニング では、アプリケーションに適した耐食性を備えた材料を選定する方法を紹介しています。

標準化によるメンテナンスの効率化

次に、設計の標準化に役立つベスト・プラクティスを紹介します。 長年にわたってエンジニアが設計の変更を重ねるうちに、システムの信頼性や正確性が失われていくケースは珍しくありません。 また、メンテナンスのニーズがシステムごとに異なっていると、担当チームの手間はそれだけ増えることになります。

プロセス測定システムを設計する際は、施工費用はもちろん、ダウンタイム(停止時間)、メンテナンス、精度の許容範囲についても常に一定の基準を適用するのが理想です。 標準化が進むほど、最適の結果が得られやすくなります。 例えば、30種類ものプロセス計装ラインが存在する精製プラントがあるとします。 この標準化を行うと、同じ基本コンポーネント(伝送器マウント、マニホールド・システム、アイソレーション用バルブ)を含む6種類に抑えられる可能性があります。 主な相違点は、チューブ配管とアイソレーション用バルブのタイプ(DBBバルブ、圧力計ルート・バルブなど)ですが、これは流体、温度、圧力、伝送器や圧力計の位置に応じて変わります。

標準化によって、メンテナンス、取り付け、トレーニング、診断など多くの作業をシンプル化できると同時に、信頼性が向上します。 また、施設で在庫する予備品も減らせるため、間接費の削減にも効果的といえます。

プロセス・インターフェース・バルブ(PIV)

プロセス・インターフェース・バルブ(PIV)は、最初にプロセス・ラインを締め切ります。従来はシングル・ゲート・バルブまたはボール・バルブがPIVに採用され、いずれも米国を中心に現在も使用されているものの、最新のベスト・プラクティスとして、2つのアイソレーション用バルブと、それらに挟まれた1つのブリード・バルブで構成される ダブル・ブロック/ブリード(DBB)バルブ を使用することをお勧めします。

DBBバルブを採用する最大の理由は安全性です。 メンテナンス時にプロセス計装ラインを締め切る場合は、両方のブロック・バルブを閉状態にしてブリード・バルブを開きますが、何らかの理由で1つ目のブロック・バルブに漏れが生じても、2つ目のブロック・バルブがプロセス計装ラインにおける圧力の上昇や流体の供給を防止します。

ダブル・ブロック/ブリード・バルブは、3個のバルブを使用する構成のほか、一体型のユニットとして購入することも可能です。 一体型のユニットであれば、サイズと重量を抑えることができます。 一体型DBBバルブはあらゆる流体に適合しますが、ボール・バルブを使用するのであれば、粘性が高い流体には特に適しています。

導圧管

導圧管は、PIVバルブをマニホールドおよび伝送器に接続するラインです。その他のプロセス計装コンポーネントと同様、適切な状態のプロセスを伝送器まで移送する役割を担っています。導圧管を配置する目的は、以下の3つです:

  • 腐食、スケール(生成物)、詰まりの発生を防止する
  • 漏れ個所を減らす
  • 特定の温度範囲を維持する、または凍結を防止する

最初の2つの目的は、炭素鋼製のパイプとねじ接続の代わりに、適切な合金製(ステンレス鋼など)のチューブとチューブ継手を使用すればクリアすることができます。 ステンレス鋼チューブは曲げ加工が可能なため、接続個所を削減することができます。 接続が必要な場合は、フェルールを2個使用したメカニカル・グリップ構造のチューブ継手を使用することをお勧めします。 このチューブ継手は、従来の管用テーパーねじ継手とは違って、熱サイクルや振動が存在しても緩んだり抜けたりすることはありません。

3つ目の目的である特定の温度範囲を維持するには、導圧管を加熱します。 導圧管を断熱する場合は、現場でトレース作業を行うか、ポリマー・ジャケット付きの断熱チューブを入手してください。 加熱保温バンドル・チューブであれば、すぐに取り付けることができます。 加熱保温バンドル・チューブを使用する場合は、バンドルを接合または切断する際に、必ずメーカーの手順書に従って断熱材をシールしてください。

マニホールド

マニホールド は複数のバルブで構成されており、各バルブのボディは単一の金属ブロック(通常はステンレス鋼)から機械加工で製作されます。 マニホールドを伝送器に取り付けてラインを遮断すれば、伝送器の校正やメンテナンスを行うことができます。

マニホールドも品質と信頼性は特に重要です。 校正時や通常稼働時は、マニホールドのバルブのうち少なくとも1つは閉状態ですが、締め切りが不完全だと伝送器の読み取り値が不正確になるおそれがあります。

スウェージロックでは、施設におけるプロセス計装ラインの問題特定のサポートを行っています。 経験豊富なスウェージロックのフィールド・エンジニアが実際に現場を訪問してシステム評価を実施し、オペレーション改善のアドバイスをいたします。ぜひご利用ください。

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クローズ・カップル・マニホールド(オプション)

プロセス計装ラインについて細かく見て来ましたが、次は設計をシンプルにする方法を紹介します。 アプリケーションに採用することができれば、このオプションはスマートかつシンプルなソリューションになります。

導圧管は取り付けやメンテナンスの費用がかかるだけでなく、詰まり、漏れ、温度管理、腐食といったさまざまな課題があります。 この導圧管の代わりとなるのが「クローズ・カップル(近接した接合)」と呼ばれる方法です。 この方法では、プロセス・インターフェース・バルブとマニホールドを1つに集約したユニットに伝送器を直接取り付けたアセンブリーをプロセス・ラインに取り付けます。 多くのエンジニアの間で好まれている手法ではあるものの、クローズ・カップルによる取り付けにはいくつかの制約があります。

1つ目の制約は温度です。 従来のセットアップ方法では、導圧管は高温のプロセス・ラインから伝送器を保護しています。 クローズ・カップルで取り付けると、伝送器とプロセス・ラインはわずか数センチしか離れていないため、プロセス・ラインが非常に高温になると、伝送器が正常に動作しなくなるおそれがあります。

2つ目の制約はアクセス性です。 校正作業を考えると、伝送器にアクセス可能というのは必須条件です。 このため、プロセスに取り付ける位置が地上15メートルもの高さになるのであれば、クローズ・カップルを使用するのは現実的とは言えません。

最後の制約は初期費用です。 クローズ・カップルは先行投資が必要になります。 ただし長い目で見れば、このソリューションで最終的なコストが抑えられる可能性は大いにあります。 もし機会があれば、検討することをお勧めします。

最後に

測定値の精度を重視し、高品質の伝送器を使用するのであれば、プロセス計装ラインにも同様の配慮が必要であることがおわかりいただけたでしょうか。 プロセス測定の精度は伝送器の影響を受けますが、それと同様に伝送器の精度もプロセス測定ライン・コンポーネントの品質、取り付け方法、メンテナンス方法に左右されます。 計装用配管の接続方法やプロセス導圧管の細かい部分を中心に施設の標準化を進め、信頼性が高いシステム・コンポーネントを採用すれば、測定値の信頼性と正確性を向上させることが可能です。 測定値の精度が向上すれば、時間の短縮、さらなる効率化、プラントの収益改善など、さまざまなメリットが得られることは間違いありません。

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